こんにちは。
今回はいよいよ我が家の「棟上(むねあげ)」の様子です。我が家もついにこの日を迎える時が来たのです!
在来工法の木造住宅建築で、施工的にメインイベントとなるのはやはりこの「棟上」ではないでしょうか。「棟上(むねあげ)」とはつまり「上棟」、屋根の最頂部である「棟木(むなぎ)」を据える作業を言いますが、ここでは棟が上がる部分まで建物を組み上げていくフレーミング作業全体の事を指して言っています。
うちクラスのサイズ(約40坪)なら、1階の床ができていれば、一日で概ね家の骨格が組み上がります(プレカットでクレーン作業前提ですが)。それまで平面的だったものが一気に立体的になる様は、現場監督としても、何より施主としても感慨深いものがあります。
前にもお伝えしたかもしれませんが、2×4工法を軸としていた工務店に勤めていたぼくが、あえて在来工法を選択した大きな理由は、ウチのような狭小現場環境において、大きな搬入・荷揚げ作業を伴う建方作業が短期決戦で済むからです。ですからこの「棟上」当日を、いかに事故や近隣トラブルなく終えるために、手配・段取りすることが大きな命題の1つであったわけです。
準備として
・構造材プレカットチェック
構造材プレカットとは、木構造部に使われる部材が短期でスムーズに組み立てていけるように、サイズや接合の為の加工がなされた状態で納入されるものです。
このプレカットが的確になされるようにその図面などをチェックするのも現場監督の務めです。ここまで一生懸命考えてきた計画も、この時点でもし間違った指示を出してしまえば、間違った家が組み上がってしまうことになります。(プレカットに限らず、そもそも工事全般にも言えることですが)。
ですので、階高や屋根形状など大きな事はもちろんですが、ホールダウン金物や筋違の位置が窓や各部納まりに干渉しないかなども細かくチェック・修正指示していきます。
そういえば、ぼくが現場監督として初めて構造プレカットにOKのハンコを押した時は、手が震えていたのを思い出しました(笑)。木構造材は木造住宅予算の中でも大きな金額を占めますしね。
・構造材の各搬入手配
先述のように、短期決戦型の「棟上」当日にはその日組み上げられるための資材がわんさか納入されます。敷地が広ーいのであれば事前にすべて納入しておいて、作業進捗に応じてクレーンで吊り上げればよいのですが、そうではありません。資材を仮置きしておくスペースもなければ、搬入車両が周辺道路に待機しておく訳にもいきません。つまり、各作業のタイミングでピンポイントでその資材が搬入されてくる必要があるわけです。もちろん人間がする作業ですので、多少早かったり待ちが発生したりしますが、そのラグをできるだけ小さくする事ができれば、周辺トラブルなどのリスク回避につながります。
という訳で、その搬入時間の指定や何を搬入するのかが重要になってきます。例えば、2階床を張り終えるタイミングで2階の柱や小屋梁、小屋梁が組み上がるタイミングでその上の束・母屋、それから垂木・野地といった具合です。あと棟上当日には施工しない筋交い・間柱や外壁合板、下地材や補足材関係も、棟上当日の各階の施工タイミングに合わせて搬入し、吊り上げて建物内に納入しておきます。これらはもちろん大工さんと事前に打ち合わせて段取りしておきます。
前置きが長くなりました…。それでは当日の様子を見ていきます。
棟上当日の様子
ご覧のように狭い路地に面する立地です。それでいて交通量がけっこうあるので、この日のように大きな搬入が何度もある場合は特に注意が必要です。前回の土台作業の後に、先行の足場が組み立てられています。
クレーン車を敷地にぎちぎち乗り入れています。クレーン車がここまで進入してくるのも大変でした。安全確保の為のガードマンさんを数名据えての作業スタートです。1階の柱が建てられていっていますね。
狭い狭いといっても、クレーン車が何とか入るだけウチの現場はマシなほうです。クレーン車など到底入らない敷地や道路にも据えれない(据えれても障害物や高低差などで現実的でない等)状況の現場も多々ありまして、その場合、道路に余裕があったり通行規制の対応などが出来る場合は、そこに搬入車を停め、そこから材料をすべて人力で現場に取り込んで高所へ荷揚げする「手揚げ」を行います。さらにそれもできない道路事情の時は、現場から離れたどこか広い道路から、人間が材料すべてを手運びするという「小運搬」という作業が発生します。これは建方工事だけでなく、工事全般に付きまとうので、こうなってしまうと建築コストに大きな人件費が上乗せされてしまうことになります。なので現場監督としては、現場環境の工夫などでこれを回避する努力はしますが、どうしようもない現場はどうしようもないのが現実です。
2階柱が建ち終わったところ。電線が厄介なのですがクレーンドライバーさんががんばってくれています。
ワタクシです。なぜぼくが写っている写真があるかというと、妻が見に来ていたからなんですね。
資材の玉掛けや荷降ろしの位置を合図したりもしていますが、基本的には監督ですので現場や周囲に危険がないよう目を光らせたり、施工に間違いがないか確認しながら行っています。自宅だからという訳ではなく、こういった棟上などの大きな作業の場合はできるだけ立会いの下管理するようにしていました。ただ会社で多かった2×4工法(非パネル)の場合は建方工期も長く、常駐のように管理するのはまず不可能でしたが、要所を押さえて現場へ行き、大工さんと打ち合わせ・指示し、現場の不備があれば改善し、安全にトラブルなく進めれるように努めていました。
小屋組み中です。
長ーいですよね、クレーンのブームって。ビルや高層マンションに比べたら戸建て住宅などごくごく小規模なものですが、それでもすごいもんだなと思います。
屋根の垂木と軒桁との接合部分。こういったすぐ後で隠れてしまう所や、この日施工してしまう各ボルトや火打ち・カスガイ等の金物に抜け・不具合がないかもチェックしておきます。
関係ない話ですけど、ぼくはけっこう高所恐怖症です。こんな仕事をしておいてなんですが、そうなんです。さっきの話ではないですけど、ビルとかに比べたら戸建てなんてちっぽけなものなんですけど、ビルとかって規模が大きい分、足場とかの仮設物もガッチリしているというか、勝手なイメージありますけど、住宅って限られた立地になんとか足場を組み立てたりしてる場合も多く、逆に不安定な部分が多いような気がするんですよね。もちろん簡単に倒れたりするものではないし法に沿ったものなんですけど、それでも揺れるし怖い。
3階建ての建物ができてない時点で、足場の高層部に登ってたりするとグワングワン揺れて、「あぁ、このまま倒れたら死ぬな…」なんて想像をしながら度々登っておりました。
鳶の職人さんはすごい。もちろん大工さんもすごい。このへんは慣れたようであまり慣れませんでした。そういった危機意識も監督には必要ということで(笑)。
そんなこんなで屋根の野地合板が張り終わり、なんとか家の形ができあがりました!
前面道路側が大屋根の片流れ頂部になっているためか、自分としては思っていたより大きな家が建ったなぁという印象を受けました。この片流れ屋根の頂部というのが我が家では「棟」となり、いわゆる「棟が上がった」という事になるわけです。
前後している写真ですが、「なんとかここまでできたなぁー」という大工さん一同の一服の様子。ホントに皆さんお疲れ様、ありがとうございました。棟梁をしてくれる大工さんの、仲間が集まってくれた形です。こういった時のチームプレイを見れるのも在来木造の面白さかもしれません。
妻だけでなく、現場近所の実家の父も見に来ておりましたので、棟梁に挨拶し今後もお願いしますということで、ウチの場合は手土産(ビール)とご祝儀を渡し、この日は作業終了となりました。
最後にナイスタイミングで屋根屋さんが来てくれ、ルーフィング(防水用の下葺き材)を施工してくれました。これで真上からの雨はしのぐことができます。
最後に
いやぁ、なんとか事故もトラブルもなく終えることができました。
現場監督としても施主としても、「上棟」というのは、「ここまで来た」という1つの区切りであると同時に、これから竣工に向けての始まりでもあります。木工事でいえば、「造作」と呼ばれる主に内部のディティールを形作る作業があり、そのために思案・指示しないといけないことが施主としても監督としてもまだまだ山積みです。
果たして計画通りの住まいを実現することができるのか。それはこれからの行動にかかっています。そんな珍道中を引き続きお届けできたらと思います。
それでは今回はこのへんで。ありがとうございました!